夏野の驚異の部屋

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私がクジラ類の死骸を発見してから脊椎の骨格標本を作るまで【一部閲覧注意】

どうも皆さんこんにちは。

篠虫です。

 

 

タイトルを見ればおわかりでしょうが、今回は偶然の発見から生まれた私の挑戦をまとめた記事になります。

 

ちなみにこの話、今年の6月の出来事になります(~_~;)

 

……遅くなってすみませんm(_ _)m

 

 

では当時の記録を振り返っていきましょう!

 

 

※一部、動物の死骸の写真があるため苦手な方は閲覧注意

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

いきなり標本作りについて話してもいいのですが、一応そうなったきっかけから書いていこうと思います。

 

全編合わせて結構な長さになるとおもうので、各人、お好きな章だけ目を通していただければと思います。

 

 

 

発見までの経緯

 

初めてのビーチコーミング

ことの始まりは今年の6月17日まで遡ります。

 

その日、私は父と二人で初めてのビーチコーミングをしに某県某所の海岸へ行きました。

ビーチコーミングとは海岸や砂浜に流れ着いた漂着物を拾って収集する趣味の一つです。

対象になるのは人によって異なりますが、主に貝殻・ビンや浮き等のガラス類・ヒトデやウニ等の棘皮類・クラゲ・海外からの漂着物・流木、そして魚や海鳥の死骸など……

 

運が良ければ目当てのお宝が、運が悪ければ収穫ゼロというシビアな趣味でもありますが、子供の頃の宝探しみたいで楽しそう!と思った私は急遽、昆虫採集の予定を変更して良さげな場所を調べて向かったのでした。

 

 

 

海岸をひたすら歩く

――探索から3時間。

すでに3カ所の海岸を下を見ながらひたすら歩き回ってきたが、めぼしい物はほとんどなし。

 

拾った物はこんな感じ。

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初ビーチコーミングの成果。 あれ、想像していたより……

 

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左からコウイカの殻(イカの骨)、二枚貝(橙)、タカラガイ、カイ、謎の白い石?、ウニの仲間(大)、大型の巻貝、マクラガイ3つ、ウニの仲間(小)、二枚貝(白)

 

持ち帰ったはいいものの、調べても一体何の種類かなかなかわからず、今は名無しのラベルと共に我が部屋に安置されています(~_~;)

 

 

とまあこんな調子で、もっと綺麗な貝殻や海棲生物の亡骸が見つかるかも、なんて思っていた自分の甘さを思い知りました…

しかし、あまりにも漂着物自体が少なかったので、ひょっとすると先に誰かが歩いた後でめぼしい物はすべて拾われてしまっていたのかも知れません。

またいつかリベンジしたいと思っています!

 

 

 

運命の出会い

 

と、数時間歩いて父も私もすっかり疲れていました。

「なにか、なにか”いいもの”が見つからないものか…!」

 

そう祈りながらその日最後のポイントへ。

駐車場から歩いて砂浜に向かう道。

満潮時の波打ち際から20mは離れている地点に、大きなタイヤが放置されていました。

「誰が捨てていくんだろ」

視界に入ったそれに目を向けると、そのすぐ横、なにやら黒い塊が――

 

 

「あっ!!!!」

 

 

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初めて本物を見たけれど、一目で何かわかりました。

とっさに私は「クジラ」の死体だと思いました。

(正確な種名がわからないですが、以降主に”クジラ”と呼んでいきます)

 

 

不思議と臭いは感じられず、見た目からは死後1~2ヶ月ほどだと思いました。

まだ6月という初夏の季節で最高気温が30度前後だったため、腐敗の進行が遅かったのだと思います。

 

 

上の写真だと、どこがどうなっているのかわかりにくいですが、少し引いて見てみるとこんな感じ。

 

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描込みを加えたもの。 種の特定にも重要な頭部は残念ながら見つからなかった。

 

全体の大きさは1m弱

 

胴体部、特に胸からお腹辺りは砂が被ってほとんど肉も骨も消失していました。

首から上、頭部もずいぶん前に失われたのか周辺を探しても見つかりませんでした。

 

もしかすると誰かが持ち去ったのかも知れません。

 

 

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表面アップ イルカ等のゴムっぽい質感の皮膚

 

 

もっと近づいて調べてみると、急に臭いがしてきました。

 

初めに臭いがしなかったのは単に風向きのせいだと気付きました。

 

とはいえ私はさほど気にするほどの臭いではありませんでしたね。

他に例えようのない独特な臭い。発酵臭とは違うし、ただの腐敗臭とも違うような……

クジラが腐った臭いとしか表現できません。

 

 

以前から動物の漂着死体は腐乱しているためかなりの悪臭を放つ、と聞いていたので、その割りには、といった感じでした。

 

おそらく他の人が嗅いだら普通に「クサい!」と言ったでしょう(^_^;)

 

 

胸びれ、尾びれも残っていて、かろうじてこの身体が生前にクジラであったことを教えてくれます。

 

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胸びれ 形がしっかり残っている。

 

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胸びれの関節部分 球体になっているのが見て取れる。

 

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尾びれ 表皮が剥がれ落ちて赤い身が露出している。

 

足下にあった手頃な流木を手に取り、少し砂をどかそうとするも大量の海藻が絡まっていて苦戦しました。

 

そして力一杯つつくと、残っていた身体がやや崩れて中からは大量のウジ……

(写真無し)

 

 

肉かと思った部分全てが蠢くウジ虫の塊でした…

 

こんな量を見たのは初めてだったので、さすがにちょっと引きました(;´Д`)

 

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崩れた胴体部 キンバエが何匹も飛び交っていた。

 

回収する大変さ

 

一通り観察した後、いざ持ち帰ろうとしましたが、これほど大きなものを持ち帰る準備もしていないし、仮に持ち帰るとしてもレンタカーにこんな臭いのものを長時間乗せていたら車内中に死臭がこびりついてしまいます。

 

もったいないなーと思いつつも、唯一持ち帰れそうな部分だった完全に露出した脊椎(背骨)を取り外して回収することにしました。

 

しかしこれが思いの外、重労働でした。

 

脊椎は初めから一部しか残っていなく、しかもほとんど肉が付いていなかったのでその場で落とせるだけ削ぎ落として取り外そうとしたのですが、周りをぐるぐると紐のような物が絡まっていて簡単に取れません。

しかもこの紐みたいな物質が硬くて、手持ちの鈍い万能ナイフで全て切り取るのに30分以上も要してしまいました…

 

後で思ったのですが、恐らくあの紐のような物は身体の腱か神経?だったのではないかと考えています。

硬い部分でウジも食べず、だから骨にまとわりついて残っていたんじゃないかと。

 

 

ともあれ無事に骨を回収して、大満足の気持ちで帰路につきました!

 

 

 

ただ大変だったのはむしろここからでした……

 

 

 

 

 

持ち帰り~いざ、標本作り開始!

 

翌日、作業開始

他の収集物の写真も撮り終え、いよいよメインディッシュ、骨格標本作りを始めなければいけません。

 

しかし、私に骨格標本を製作経験はナシ!

まずは手持ちの本を開いて参考にしました。

 

標本の作り方―自然を記録に残そう (大阪市立自然史博物館叢書)

標本の作り方―自然を記録に残そう (大阪市立自然史博物館叢書)

 

 

昔買ったこの本。

中には化石・鉱物から海藻やキノコを含む植物・昆虫類・無脊椎動物・脊椎動物の標本の作り方が種類ごとに詳しく丁寧に書かれています。

これさえあればどんな標本でも作れる!というほど優良な標本入門書です。

 

早速「脊椎動物の骨格標本」のページを開いてみます。

さすがにクジラ専門の項目はありませんでしたが、いくつかの標本製作法が書かれていました。

 

骨格標本を作るのには複数の工程があります。

 

大きく分ければ本来、~(毛)皮を剥いて肉を取りバラバラになった骨を組み立てる

と言った流れになりますが、今回はすでに肉の大部分は無く、骨と間の軟骨部分がほとんどであるため工程を飛ばして、残った肉質の除去から始めていきます。

 

肉を除去する方法

それにはいくつも方法があります。

本には、

  1. 腐敗させる
  2. 虫の餌にする
  3. 鍋で煮る
  4. 野ざらしにする

の大きく4つが載っていました。

 

1の腐敗法水に浸して腐らせ、取り出したらよく水で洗い流して乾燥させる方法です。

難しい作業のない簡単な方法ですが、水道水だと腐るまでに少し時間がかかります

 

2の虫の餌法ペットショップで売っている爬虫類や小動物の餌用のカツオブシムシの幼虫と一緒にタッパーにいれ、その幼虫に肉を食べてもらう方法です。

手間のかからない手っ取り早い手段ですが、こちらはさらに時間がかかります

 

3のお鍋法骨を鍋や一斗缶の中でぐつぐつ煮込む方法です。

重曹を入れると少し肉が落ちやすくなりますが、鍋が傷つくためアルミ製は避けると良いです。

また脂が多ければ洗剤(洗濯用)を入れると少しマシになります。

沸騰させてしまうと骨が痛むので、弱火でゆっくり煮ます。

取り出したらブラシやピンセットで肉をとって完成。一番早くできあがる方法です。

 

4の野ざらし法洗濯ネットなどで包んでザルやシートの上に置いたら上からカゴなどをかぶせて放置する方法です。

また地面に埋めておく方法もありますが、どちらも野生動物やカラスなどに大切な標本を持って行かれないように重しをしておかなければなりません。

 

 

4つとも自宅で行なうことができる方法で、どれにするか迷いました。

虫の餌は時間がかかるし、鍋を使ったら家族に怒られる。野ざらしや埋めるのは臭い問題もある。

 

 

ということで、まずは水に浸けて腐らせる1の腐敗法を試してみました!

 

 

 

 

困ったときのTwitter

 

ネットの世界にSOS

とりあえず一日水に浸してみたものの、一体いつまでこうしていればいいのか不安になる私。

 

こんな時は識者の方々に助言をもらおう!

 

と言うわけですぐにTwitterで助けを求めました。

 

 

 

こうつぶやいてみたはいいものの、

 

「どうせ自分のツイートになんか大して反応無いだろう」

 

インパクトのあるツイートではあるけれど、誰か一人からアドバイスが来てくれたら御の字だな~

 

なんて思いながら、半日放置――

 

 

 

 

その日の夜、再びTwitterを覗いたら予想を遙かに超える反応が!!

なんと自身過去最高の閲覧と反応数でした(^_^;)

 

たくさんの方々がオススメの処理法をお教えくださいました!!

この場を借りて、改めて御礼申し上げますm(_ _)m

 

 

 

どうやら本に載っていたもの以外にも様々な方法があるようで、骨格標本作り界隈の人達それぞれに独自のやり方があるようにも感じました。

 

中でも最も多かったのは、ポリデント又はパイプユニッシュを入れた水に骨を浸けて観賞魚用のエアポンプで水を攪拌させる方法でした。

エアポンプは攪拌だけで無く水中の微生物の働きを活性化させる意味合いが強い、とおっしゃる方もいました。

 

他にも上記の代わりに台所用洗剤を使う方法、ヌマエビ・スジエビに食べてもらう方法、マイタケと大根の酵素で分解する方法、土・砂に埋めておくのが最も良い方法という方も。

また、長時間の水中放置は骨を痛めたり、黄ばみを生じたりすることがあるとも教えていただきました。

 

 

すぐに「ポリデント・エアポンプ法」を試してみました!

 

 

数日間の格闘

以下、当時のツイートで連日実況していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな調子で一日に数度、屋外に置いた骨を確認しては適度に水と薬剤を入れ替えてこまめに様子を見ました。

 

しかし簡単にはいかないのが肉取り工程でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまで4日間、例の方法を続けてきて大部分の表面にこびりついた肉と脂肪が取れて脂が抜けたのですが、肝心の骨と骨の間をつなぐ軟骨が一向に柔らかくならないことにしびれを切らした私は、各骨を切り分けた後、ついに禁じ手のあの方法を試しました。

 

 

 

 

 

 

切った脊椎は順番がわからなくなると大変なので穴に針金を通して一繋ぎに

こうすればゴチャゴチャになることはないので安心です!

 

 

最終兵器・鍋

 

 

 

そう、4のお鍋法です!

普段調理に使っていない鍋をこっそり拝借してキッチンの換気扇をオン!

グツグツ煮込むこと10分ちょっと……

 

 

 

 

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一度目の煮た後 あれだけがっつり残ってた軟骨がだいぶすっきりに。

 

 

さらにもう一度10分煮て、水洗いと共にナイフとピンセット、ブラシで格闘すること15分。

 

 

 

※骨の煮込みに使用した鍋は、その後洗剤でよく洗いましょう。衛生面だけで無く臭いが付く場合があります。

 

 

 

こうして最も過酷で重要な肉取りの工程が終了しました!

 

 

いよいよ、完成の時です。

 

 

 

ついに完成……!!!

 

最後の乾燥

きれいさっぱり肉と脂が取れた骨は針金を通したまま、またしばらくの間乾燥させます。

 

この最後の乾燥も標本の完成度に関わる重要の工程です。

ここでしっかり乾燥しきる前に保管してしまうと臭いが取りきれず、いつまで経っても少し嫌な臭いが骨に残ってしまいます。

 

 

なので確実に乾くように、エアコンの効いたリビングで1週間放置しておきました

 

 

家族からは若干嫌な目をされましたが……

 

 

 

 

標本の記録 

そして最後の最後。

 

標本製作の最重要の一つ、ラベル作りです。

 

 

あらゆる標本に共通する話ですが、一般的に標本とは後から他人が研究で利用するときに必要な情報(種名、産地、日付、採集者など)がなければその価値が大きく変わるものとされます。

最近標本のラベルに関して少々議論があったようですが、

それはひとまず置いておいて。

 

 

ラベル=記録があれば標本の価値も利用法も増えるということなのです。

 

 

というわけで、私もしっかりと書ける情報は記入して……

 

 

 

おっと、忘れていました。

 

いつまでも針金で固定しているのはみっともないので、

目立たないけど丈夫な釣り糸(テグス)で骨同士を正しい順番に繋いで結び留めます。

 

 

仕上げにラベルも釣り糸で標本に固定すれば――

 

 

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完成!!

 

想像の何倍も綺麗にできました!

 

水に浸けていた途中で色が黒っぽく変化したり、上手く肉が落ちなかったときは駄目かと思いましたが、本当に良かったです!!

 

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あれだけ汚れていた表面は、真っ白くツルツルに。

 

 

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右端に付いているのは、元々取れていた骨の一部と欠片。

 

 

まとめ

 

やることはどれも初めてのことばかりで、昆虫標本とは全く異なる作業は新鮮で楽しかったです!

 

 

今回は様々なところで運が良かったです。

 

そもそも初めてビーチコーミングに行って、初めて行く海岸で、初めてクジラの死骸を見つけるなんて一体どれほどの運が回った来たのだろうかと、当時を振り返って思います。

 

 

反省点があるとすれば、やはり現地に残してきた他の部分をもう少し調べておけば良かったです。

 

せめて胸と尾のヒレの部分だけでも回収すれば良かったなと思ってやみません(;´Д`)

 

そうすれば今回できなかった「種の同定」ができたかも知れません。

 

 

そう、結局骨の主が誰だったのか突き止めることはできませんでした

 

私もいくつか本を読んで調べたのですが、さすがに脊椎数個だけで種名まで特定するのは素人には不可能な芸当でした。

 

恐らく専門家でも容易ではないはず。

 

 

ただ個人的な印象だけで言うならば、仮に頭部が残っていたとしても全長が130~160cmほどしかないので、成体では無く幼体=子どもである可能性が高いと考えています。

 

あとは、発見場所と生息地を重ね合わせて絞り込むしかなさそうですが……そこで私は力尽きました(^_^;)

 

 

 

もし次があるのなら、頭部を持ち帰って標本を作ってみたいですね。

他にも魚や鳥、陸上哺乳類の標本も機会があれば挑戦してみたいと思います!

 

 

その時はまたこうしてブログに書くので、よろしくお願いしますm(_ _)m

 

 

 

それではまた!

(。・_・)ノ

 

 

 

 

世界で一番美しい クジラ&イルカ図鑑: 絶景・秘境に息づく (ネイチャー・ミュージアム)

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[新世界]透明標本~New World Transparent Specimen~

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骨の学校―ぼくらの骨格標本のつくり方

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