夏野の驚異の部屋

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【オススメ本】今年読んだ本紹介&感想 『闇に魅入られた科学者たち 人体実験は何を生んだのか』

どうも皆さんこんにちは。

篠虫です。

 

 

今回紹介するのは、この本です!

 

 

 

闇に魅入られた科学者たち―人体実験は何を生んだのか

 

 

 

 

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『闇に魅入られた科学者たち 人体実験は何を生んだのか』

著:NHK「フランケンシュタインの誘惑」制作班

出版社:NHK出版

初版:2018年3月1日

ページ数:本文221p

 

 

 

 恐ろしげな表紙と題ですね。

 

この本は、著者を見ればわかりますが、NHKで放送されていた「フランケンシュタインの誘惑」という科学番組を基に作られています。

 

現在続編が再放送されたりしているこの番組ですが、タイトルにあるように科学における「」に光を当てて特集する内容になっています。

ナレーターは吉川晃司さんというNHK特有の謎人選ながら、独特で不気味な雰囲気が番組にあっていると思います。

 

 

科学者は、自らが求める真理や頂上を目指すことならどんなことでもやる。例えそれが法や倫理を犯すことになっても……。

番組名にもなっている「フランケンシュタイン」は、メアリー・シェリー原作の有名な小説『フランケンシュタイン』のことです。

 

フランケンシュタインは、作中の博士の名前。

天才博士フランケンシュタインは己の手で「人」を創り出そうと実験を繰り返し、ついに完成しました。しかしその人造人間は人には遠く及ばない「怪物」だったのです。

色々手を尽くした博士でしたが結局、「怪物」を制御することはできずに見放してしまいます。

その後、博士と「怪物」がどうなったかは言うまでもなく、悲惨な結果を生み出しました。

 

 

優秀な頭脳に圧倒的な探究心が組み合わされば、もはや誰に求めることなどできない、暴走列車と化してしまいます。

 

この本では、そうした天才的な学者でありながら、倫理の道を踏み外してしまった科学者たちを、狂気的な実験・研究と共に紹介しています。

 

 

彼らが世界に与えたのは、恩恵なのか、それとも……。

 

 

本の良さを含め、一緒に見ていきましょう。

 

 

 

 

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5人の科学者たち

 

本書で紹介される科学者は5人。

 

順番に、

 

”近代外科学の父”ジョン・ハンター(外科医・解剖学者)

”ナチス 知られざる学者”オトマール・フォン・フェアシュア―(人類遺伝学者)

”悪魔の手術”ウォルター・フリーマン(精神科医)

”国家ドーピング計画”マンフレッド・ヒョップナー(医師)

”史上最悪の心理学実験”フィリップ・ジンバルドー(社会心理学者)

 

 

専門はバラバラな学者ですが、全体のテーマが「人体実験」なのでやや医学系に寄っていますね。

 

 

構成は、各章で1人ずつその生涯と研究人生を紹介する形になっています。

 

 

文章内の各ポイントには、現役の専門家や研究者の話も載っており、話の信憑性を増しています。

 

また、研究や実験の”狂気”の側面だけでなく、その後の研究や社会への良い影響についての記述があるのも良い点です。

 

 

難しい言葉遣いをやめ、ページもギッシリも字が詰まっている訳ではないので、小学校高学年でも読みやすくなっています。

 

 

科学に詳しくない人でも取っつきやすく興味をもつのにちょうど良い1冊だと思います。

 

 

個人的には、もっと当時の写真や図版なんかがあると資料価値が高まったと思います。

 

 

 

 

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闇に取り憑かれた科学者

 

 

彼ら5人はどんな科学者なのか。

 

簡単ですが説明していきます。

 

 

”近代外科学の父”ジョン・ハンター

 

1人目、ジョン・ハンターは1728年のスコットランドはグラスゴー生まれ。

幼い頃から自然に興味を持ち、毎日野山を駆け回っていました。

20を越え、当初目指していた大工を諦め、10歳年上の兄ウィリアムがやり始めた解剖学学校の助手をすることに。それがハンターと解剖との出会いでした。

当時は間違った医療知識・経験不足の医師が蔓延し、医療は発展途上でした。

 

また宗教的価値観の影響もあり、解剖自体に社会全体がまだ強い抵抗感持っていて、解剖用の遺体もまるで足りていませんでした。

 

ウィリアムはハンターに遺体を調達するよう頼み、公開処刑場から死体を回収し、それを使って解剖を学ぶ、という奇妙な生活が始まりました。

 

ハンターは、兄の手伝いをする内に、めきめきと解剖の知識と実力を身につけていき、その右に出るものはいないほどの腕前になりました。

 

その内、より解剖を行ない知識と技量を身につけるため、ハンターは墓泥棒と手を組んで埋葬された遺体を掘り起こし、それを買い取って解剖する、という流れができました。

 

この頃から、徐々にハンターは解剖の魅力に取り憑かれ、行動がエスカレートしていきます……。

 

 

この先は本書で読んでください!

しかし、ハンターがいたことで解剖の重要性、人体への理解、手術技術の向上など近代医学に多大な影響を与えたことは間違いありません

 

 

 

”ナチス 知られざる学者”オトマール・フォン・フェアシュア―

 

2人目、オトマール・フォン・フェアシュア―は1896年、ドイツ中部の村ゾイツに住む貴族の家系に生まれました。

自然科学への関心を強めながら成長し、大学入学後はワンダーフォーゲル部で活動しながら、白人至上主義や反ユダヤ主義に傾倒し、次第に遺伝学や人種学にのめり込んでいきます。

第1次世界大戦の敗戦後、別大学へ入学し医学を学びます。学生時代はちょうどドイツ混乱期の最中で、そうした影響からかフェアシュア―は優生学研究の道を進んでいきます。

優生学とはダーウィンの進化論、メンデルの遺伝の法則の応用科学で、作物と同様に人類も優秀な能力を持つ者だけを残し、優れていない者は淘汰する、そうして人類または民族を「進化」させることを目的としています。

今では倫理的問題が大きすぎると、全く否定されているこの学問ですが、日本でも少し前、強制不妊手術の裁判が行なわれましたが、日本を含め当時は世界中で流行していた分野でした。

 

フェアシュア―は最初、双子の研究を行ないました。彼は特定の病気の罹患率には遺伝が影響していると考え、一卵性と二卵性の双子で実験をし、当時問題となっていた結核の罹患率が一卵性の方が高いことを突き止め、病気の感染率に遺伝が影響すると考えました。この功績により、国際的な地位を得た彼は、研究に没頭していきます。

 

そしてその目的は少しずつ歪んでいくのでした。

 

 

続きは本書で!

彼の運命を決定づけたのは、やはりナチスと手を組んだことでした。彼の研究内容とナチスの思想は親和性が高く、フェアシュアー自身はナチス的思考が強いわけではありませんでしたが、その大きな力の後で研究を続け、多くの犠牲者を生んでしまいました。

 

 

 

 

”悪魔の手術”ウォルター・フリーマン

 

3人目、ウォルター・フリーマンは1895年、アメリカ東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで、裕福な医者家族の長男として生まれました。

昔から孤独を愛する性格の彼は、写真が趣味であちこち出かけては写真を撮りました。細かく記録する性質は医者になってからも発揮されました。

憧れていたのは、世界的外科医の祖父だった。いつか医学で社会的名声を得ることがフリーマンの目標でした。

 

大学を優秀な成績で卒業、さらに地元の大学の医学部を経て、ヨーロッパの大学で精神医学を学びました。

彼の学生時代1910~20年代の精神医学は、フロイトの夢分析など精神分析学により治療を行なう全盛期でした。しかし、それだけでは直せない精神病が多くありました。

有効な治療法がなく、ショック療法や無理矢理眠らせると言った乱暴な治療に、病院の狭い部屋に患者を閉じ込め隔離するのが当たり前でした。前述の優生学の流行も影響していました。

 

そんな中、1924年にワシントン最大の病院で異例の若さで研究所長に抜擢されます。祖父期待の人事と精神病患者とその家族をどうにか助けたいという強い思いが、フリーマンを突き動かしました。

 

かねてから精神病には脳に何らかの異常があるのでは、と考えていたフリーマン。1935年に、ある研究者がチンパンジーの脳の前頭葉の一部を切り取ると凶暴性が治まるという報告、それに対して質問がされました。「その実験を応用すれば、人間も救えるのでは?」そう言った、アントニオ・エガス・モニスは早速患者20人の脳を切り取ったことを翌年の学会で報告しました。

 

これに飛びついたのがフリーマンでした。モニスの術式「ロイコトミー」を精神科医のジェームズ・ワッツと協力し、自分達なりに練習・改良して、1936年9月、アメリカ初の精神外科手術を行ないました。

 

その後4ヶ月で6人の重篤な患者に手術を行ない、その内3人が退院。社会復帰を可能にしました。

フリーマンは自分たちの新たな手術に、ラテン語で”前頭”を表すLOBOと”切る”を表すTOMYを組み合わせ、「LOBOTOMY=ロボトミー」と名付けました。

 

これが後に”悪魔の手術”と呼ばれるロボトミー手術の始まりでした……。

 

 

 

続きは本書で。

フリーマンのロボトミーについて、本文で詳しく書かれているのでそちらを参考にしてください。また、有名な手術なので、検索すればたくさん出てくると思います。

たぶん、怖い話が多いと思います。

 

手塚治虫氏も自身の漫画でロボトミーをテーマにした話を書いています。

こちらも結構、怖い内容です。

 

フリーマンの志は間違っていませんでしたが、徐々に富や名声に目がくらみ、自らの過ちを顧みることができなかったのが残念です。

 

 


”国家ドーピング計画”マンフレッド・ヒョップナー

 

4人目、マンフレッド・ヒョップナーは1934年、ナチス政権下のドイツ・ヴァインベーラで生まれました。

第二次世界大戦まで、科学やスポーツの面でも世界を牽引していたドイツで幼少期を過ごしたヒョップナーは、敗戦後に分割されたうち東ドイツで思春期を過ごしました。

 

彼は名門大学の医学部に進学、スポーツ医学を学びました。

その間に、東西ドイツでオリンピックへの合同選手団が結成。東京オリンピックがあった1964年、ヒョップナーは政権党だった社会主義統一党へ入り、新設されたばかりの東ドイツスポーツ医学研究所に勤務し、陸上競技連盟の専門医になります。

当時は医学の発展がめざましく、中でも性ホルモンの研究が進んでいました。男性ホルモンを人工的に合成した筋肉増強剤も開発され、ドーピング薬剤として密かに注目を浴びていました。

 

これにいち早く目をつけたヒョップナーは、ドーピングを用いて選手の成績を向上させて異例の速さで出生していきます。

 

人口も少なく、国際的な力も弱かった東ドイツにとって、オリンピックを含めスポーツで世界に国力を見せつけることは非常に重要なことでした。

 

そのため一つでも多くの勝利を、金メダルを、とヒョップナーを中心にドーピングの研究が加速していきました。

 

彼は極秘の実験で、筋肉増強剤「経口トリナボール」を使用しました。本来は怪我などの回復力を高めるために東ドイツで開発された当時最新の薬剤だったこれは、強い効果を発揮する副作用に、内臓障害や筋肉硬直などを引き起こしかねませんでした。

最初に被験者となった、女子砲丸投げのマルギッタ・グメル選手でした。毎日2粒飲み続け、11週で記録を10メートルも伸ばすことに成功しました。喜んだヒョップナーは他の選手にも投与を始めます。

 

しかしやがて、ドーピングの規制が始まると、ヒョップナーの実験は検査と開発のいたちごっことなっていく。

 

 

 

続きは本書で。

ヒョップナーは、選手をドーピングで強くすることから、いかにして強い効果をあげつつ検査に引っかからないかを目指すようになり、その犠牲者は増え続けました。

彼は”汚れた金メダル”を量産し続けたのです。

 

近年もロシアで大規模なドーピング疑惑が話題になりましたが、たかがスポーツされどスポーツということで、オリンピックという世界中の注目が集まり共学のスキンが動くイベントでは、あらゆる思惑が絡むため、選手のことよりメダルの色や数が重視されてしまうのでしょう。

 

最新の遺伝子改造技術では、デザイナーズベイビーを始めとする、遺伝子をいじって人間の研究も進んでいます。

 

もうこんなことが起きないことを願うばかりです。

 

 


”史上最悪の心理学実験”フィリップ・ジンバルドー

 

最後の5人目、フィリップ・ジンバルドーは、1933年にニューヨークのサウスブロンクスで生まれました。

当時のサウスブロンクスはニューヨークきってのスラム街で、「暗黒の木曜日」の4年後に生まれた彼は、暴力と犯罪に囲まれて、つらい幼少期を過ごしました。

 

暮らしていく中で、彼はあることに気付く。そのような環境にあっても犯罪や暴力に染まらない子供がいた。金のために悪に染まる子供と距離を置く子供。その境はどこにあるのか。

ジンバルドーは親の教育方針が影響してると気づきました。そうした、人間が置かれた環境によって「心」が変化することに興味を抱き、大学で心理学を学ぶきっかけになりました。

 

ですが、当時は「人の行動はその人の性格や気質で決まる。」とされていました。

状況や環境よりも遺伝が重視されていたのです。

 

 

しかし、1963年に彼の高校時代の同級生で、イェール大学の心理学者ミルグラムが「権威への服従実験」 と呼ばれる実験を行ない、一隻を投じました。

 

この実験は、ごく普通の人達に、強い権力者からの命令に服従して、見知らぬ他人に強い電気ショックを与え続ける様子を捉えたものでした。 

 

実際には芝居で苦しんでいる相手が、被験者(加害者側)からは本当に苦しんでいる余蘊見えるよう工夫がされていました。

 

実験の設定を細かく変えてやり直しても、大きく結果が変わることはなく「状況で人間は誰でも残酷になり得る。」と結論づけ、多くな反響を呼びました。

 

 

スタンフォード大学の若き学者だったジンバルドーはこの実験に後押しされ、自らの学説「それまでと全く異なる状況に置かれたとき、人は自分でも思ってもいないような行動を取るものだ。」を照明するために、心理学的監獄を思いつきます。

 

これが世にも恐ろしい、「スタンフォード監獄実験」のきっかけでした。

 

 

9人の若者を、警察協力の下、本物の警官が自宅から逮捕して”監獄”まで連行。

まるで犯罪者かのように 、指紋を採り、看守の前で服を脱がされ薄い囚人夫君着替えさせられました。そして識別番号をつけられ、狭い独房に入れられます。

 

看守役にはあらかじめ選ばれた学生が配置され、制服にマジックミレーのサングラス、警棒を片手に囚人を待ち構えていました。

 

全て仕組まれた心理学実験であり、看守囚人どちらの被験者にも事前承諾をとってあります。

 

監獄という非日常の場で、看守という立場が強いものと囚人という立場が弱いもの。

ジンバルドーの考えでは彼らは役に影響されて次第に変化していくと思われました。

 

 

そして、実験は彼の思惑通りに進んでいったのですが……。

 

 

 

 

続きは本書で!

この本を読んだ後も知らなかったのですが、どうやらこの実験は実際には行なわれていないという話もあるらしく、正直真偽は私にはわからないんですが、ジンバルドー本人の話や他の心理学者の話もあるので、近い実験は行なったのでは?と個人的には思います。

 

テレビでも時折紹介される実験で、知っている人も多いかもしれません。

心理学の教科書には必ずといって良いほど掲載されている有名な実験です。

 

人の心が状況で変わるのは、実験経過を見ると恐ろしいですね。

 

 

誰でも悪魔になる可能性を秘めていることを思い知らされます。

 

 

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総評・感想

 

一般的な科学本ではあまり紹介されないタイプの学者と研究について知れる良本だと思います。 

 

 こういうダークな部分にはどうしても惹かれてしまう自分がいますね。

不思議と人を引きつける魅力がある話です。

 

中身は、学問に貢献しながらも倫理を逸脱したハンターやジンバルドー、目的をそれてしまったフリーマン、明らかに犯罪や人権を無視した行いのフェアシュアーやヒョップナーといった科学者の、思いや考えが詰まっています。

 

彼らは悪だったのか。

 

必ずしもその全てを否定することはできません。

 

急速に発展する遺伝子工学やクローン研究の現代科学の研究者も同じように、いつ「フランケンシュタイン」に誘われるかわかりません。

 

 

もう二度と、人の手で「怪物」を生み出してしまわないように、我々一般人も科学の動向を見守る必要があります。

 

 

 

 

 

 

闇に魅入られた科学者たち―人体実験は何を生んだのか

闇に魅入られた科学者たち―人体実験は何を生んだのか

 

 

 

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さて、いかがだったでしょうか?

 

 

熱中癖で、書くのに時間がかかってしまいました。

 

本文をいかにまとめて、いかにネタバレを少なくするかは難しいですね。 

 

 少しでもその本の良さが皆さんに伝わればと思います!

 

 

 

それではまた!

(。・_・)ノ