夏野の驚異の部屋

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【オススメ本】今年読んだ本紹介&感想 『ゴジラ幻論 日本産怪獣類の一般と個別の博物誌』

どうも皆さんこんにちは。

篠虫です。

 

 

今回紹介する本は、こちら!

 

 

ゴジラ幻論 ――日本産怪獣類の一般と個別の博物誌

 

 

 

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『ゴジラ幻論 日本産怪獣類の一般と個別の博物誌』

著:倉谷滋

出版社:工作社

初版:2017年2月20日

ページ数:本文270p

 

 

 

一応、聞いておきますが、皆さんはゴジラを知っていますか?

 

日本怪獣界、そして日本特撮界の金字塔。

国内における巨大怪獣のはしりですよね。

 

放射線の影響で生まれたゴジラは、黒くて硬い身体。

二足歩行で口からは火炎を吐く。

長く太いしっぽが生え、背中には不規則に波打つ背びれがある。

 

テーマ曲の「♪デレレ、デレレ、デレレレレレレレレ」(下手)

 

は、日本人なら誰でも一度は聞いたことがある”怖い曲”でもあります。

NHKの緊急地震速報「♪デェレン、デェレン」という音ですが、あれはゴジラの作曲者伊福部昭氏の甥・伊福部達教授が昭氏の交響曲『シンフォニア・タプカーラ』の一節を参考に作成したそうです。

できればもう聞きたくないほど、日本人はなじみ深くなってしまった音ですね。

 

web.archive.org

 


伊福部昭「シンフォニア・タプカーラ」第三楽章:Vivace

 

 

 

話がそれてしまいましたが、

この本ではそんなゴジラを中心に、理学博士の著者が、

日本産怪獣を生物学・古生物学・発生生物学・動物形態学・解剖学などの視点から、「どんな生き物なのか?その起源は?」を考える内容になっています。

 

 

 

 

では、簡単に内容に触れてみましょう!

 

 

 

 

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フィクションを考察する

 

第1章から話題は作中に登場した山根恭太郎教授の「シン・ゴジラに確認された新事象について」から始まります。

 

本書冒頭の注記にも書かれていますが、考察対象がフィクションの怪獣を扱うので、作中の設定と現実の学問、虚実入り乱れた説明になっています。

ですが、きちんとここは設定、ここは現実、とわかるような書き方がなされています。

 

全編通して、架空の博士や研究者の報告や論文を読むテイストをとっており、合間合間に著者の思い・考え・懐かしの怪獣話などが書かれてる構成です。

 

 

本全体の毛色は前回紹介した、『ゾンビサバイバルガイド』と似ていますね。

 

あくまでフィクション、架空の事物をリアルでもって解説していく。

 

 

こちらは『空想科学読本』のほうがやっていることは近いかも知れません。

 

漫画やアニメではなく、怪獣専門なのが本書ですね。

 

 

 

 

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シン・ゴジラはどんな怪獣だったのか?

 

本文内容から、第1章を少しだけ話していきましょう。

 

そもそも過去のゴジラや2016年のシン・ゴジラはすべて同種の生物なのか?

 

 

答えはNO

 

過去に「ゴジラを同一種と捉える」試みはことごとく失敗してきました。

数多くのゴジラ作品が作られてきましたが、それぞれ形状や行動が異なるからです。

 

 

しかも、今回の”シン・ゴジラ”は過去のゴジラと比較しても全く新しい生き物だと、山根教授は言います。

 

これまでのゴジラは、固い殻の卵から誕生し、その時にはすでに親と同様の姿形をしていました。

一方、シン・ゴジラはというと、初確認されたとき、つまり東京湾から出現し上陸した時点では幼体、もしくは幼生でした。それが上陸後大人へと成長(進化)しました。

 

この時点で、過去のゴジラは「直接発生」、シン・ゴジラは「間接発生」をする大きな違いがあります。

 

 

また、シン・ゴジラだけの能力として、背中や尻尾の先端からも熱線を出すなどを考慮しても、今回の巨大生物が破格の存在なのです。

 

さらに、「卵から生まれる」ことがその生物を爬虫類か否かに断定できる材料にはなりません。

哺乳類でもカモノハシやハリモグラなど、単孔類は今も卵生という古い哺乳類の生態を残しているからです。

 

なので、まずはシン・ゴジラを哺乳類なのか爬虫類なのか、またはそれ以外なのか分類する必要があります。

 

 

シン・ゴジラには「瞬膜」があることが確認されています。

瞬膜は、目の表面を守る膜で、確かにヘビやワニなどの爬虫類も持っていますがほとんどの脊椎動物に備わる身体的特徴であるため、これも分類には使えません。

 

ですが、頭部に「耳たぶ」を持つこと、そして近年のゴジラの多くが表情を持つように見えること、まぶたが上から下に向けて閉じることなどから、どうやらゴジラは哺乳類か、それに準ずる動物の可能性がある、と山根教授は結論します。*1

 

上記の理由以外にも、顔の骨格に特徴があります。

 

初代ゴジラを例にとれば、下顎枝を持つ下顎骨の形状が爬虫類ではなく、哺乳類に近い。そしていくつかのゴジラでは犬歯すら分化している。一部を除き爬虫類にはない特徴です。*2

 

頭骨全体を見ても、骨性の外鼻孔が正中に単一の孔として開くこと、眼下から側頭窓へ連続的に向かう窪みが、下方で頬骨弓によって縁取られていることなどを総合すると、単弓類から哺乳類へ進化する段階で、キノドン類に非常によく似て特徴だと考えられる、と教授は言います。*3

キノドン類 - Wikipedia

 

 

私自身、これを書いていて(読んでいたときも)よくわからなかったです(~_~;)

他の分野も専門ですらない上、解剖学は全くわからないので正しく理解は難しかったです。

 

 

少しだけ素人目線で解説すると、

上の文の「下顎枝」と言うのは、人間で言う下アゴの骨、その中でもアゴの両端から垂直に伸びる部分、耳からこめかみ辺りのアゴの骨のことです。

「犬歯」は人間の一番とがった歯のことですね。

 

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側面から下顎骨の外側表面を見た図。右の赤線部分が下顎枝。

 

下の文の「外鼻孔」とは、人間で言えば鼻の穴と言われて皆が考える部分のことです。

つまりゴジラは、頭蓋骨で見ると鼻の穴が正中=真ん中に1つだけ開いている(人間は2つ)と言うことですね。

ちなみに「内鼻孔」はのどの方にある鼻に繋がる穴のことです。

 

 

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ヒトの鼻腔の図。左の開口部が外鼻孔、右の咽頭に続く部分が内鼻孔

 

「側頭窓」とは、皆さんもティラノサウルスなど今日りゅの頭蓋骨を見たときに目の後ろ、側頭部に穴が開いているのを見たことありませんか?

あれのことです。

「単弓類」とは、側頭窓によってできる細くアーチ状になった骨を、解剖学では”弓”と呼んでおり、その弓が片側に1つ(左右で2つ)であることからつけられた名前。

双弓類なら側頭窓が2つ(左右で4つ)あるということです。

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単弓類の頭蓋骨 左から鼻孔、眼窩、側頭窓。jの一部分が頬骨弓。

 

 

 

シン・ゴジラの形状や詳しい内容は映画本編をご参照ください。


まだ見たことない人は特撮好きじゃなくても面白いのでぜひとも映画を見て欲しいのですが、それは置いといて……

 

 

 

ひとまずここでゴジラの話を区切りましょう。

 

 

 

 

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モスラ・アンギラス・ラドン……

 

本書はメインはゴジラの話になりますが、副題通り日本の特撮に登場する怪獣を、本文ではいくつか取り上げて考察しています。

 

 

例えばモスラであれば、「モスラの昆虫形態学と分類学について」と始まり、まずモスラが確実に蛾の一種であること、そしてそれが何らかの理由によって巨大化したものであること、形態学的特徴から鱗翅目昆虫の中でも、ヤママユガ科に属する可能性が高いことを前提に論じていきます。

 

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シンジュサン 夏野が撮影。

 

中身の中核をなすのはモスラの翅にある目玉模様です。

ヤママユガ科には、上のシンジュサン等一部除き、ほとんどの種で大きな目玉模様が特徴です。

なので、そうした模様の分布や形態の分析、生息地と信仰、派手な色彩についても論じられています。

また、モスラの幼虫時の形態についてもカイコの幼虫と比較して種類を特定しようと試みられています。

 

 

この章も結構難しい専門用語や法則が出てくるので、半分ほどしか理解できていません(;´Д`)

 

 

何をしているのかはなんとなくわかるのですが、すとんと頭にはまらない。

かゆいところに手が届かない感じ。

 

 

 

いや、内容は悪くないんですよ!?

 

私の頭が悪いだけなんです!

 

 

 

 

他の怪獣も同様に、類似する恐竜との関連を考察したり、現生生物と比較検討しその正体に迫ろうとしています。

 

 

 

その他、筆者の怪獣話、お気に入り特撮映画リストなど特撮と怪獣、現実と虚構について様々なコラムが掲載されています

 

 

 

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総評・感想

 

専門用語の解説がなくはないのですが、私の勉強不足でその全てを理解しきることはできなかったのが唯一の心残りです。

 

加えて言えば、あまり幼い頃から特撮を見ていなかったので、情報としてゴジラやモスラ、アンギラスなどの怪獣を知っているだけで、作中の様子をしっかり見たことがありません。

 

本をまるまる全部楽しみたいという方は、それぞれの怪獣が登場する作品を一度見てから読むと、何倍も深く楽しめると思います。

 

 

怪獣を作る側も、完璧なリアルを求めているわけではないので科学的に見ると”おかしな”点や”ありえない”点と思える設定も多々あります。

 

ただ著者は、本書の中でこう言っています。

 

「科学的におかしい」、「科学的にありえない」とはどういうことか。それはちょっと傲慢ではないだろうか。……生物は、常に人間の常識や予想を超えた方法で進化してきた。だからこそ驚異なのであり、人は博物館へ足を運び、常識を越えたサイズの化石を目の当たりにし、生物の本当の可能性に触れようとするのだし、研究を続ける価値がある。怪獣映画はいわば、 その感激や驚異の延長線上に成立するものなのだ。*4

 

映画や小説の中はどれだけ面白くても、どう頑張ってもフィクションなんです。

 

その面白いフィクションに対して、「こんなの科学的におかしい」「現実にあり得ない」なんて言いますか?

 

言ったところで、何にもならない。それどころか創作物の中から”面白み”を削ぎ落とすだけの、余計な言葉でしかありません。

 

 

著者は、映画の中に巨大怪獣が出てきたのなら、どうすれば存在できるか疑似科学を構築するほかない、と言います。

 

 

どんなモノに対しても考え、分析し、理解し、人々に広める。

 

科学の面白さはそこにあるのかも知れません。

 

 

 

 

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さて、いかがだったでしょうか?

 

前回、全く違う本を紹介する~と言っていましたが、そうでもありませんでしたね。

 

フィクション、虚構を真面目に考える、というのは簡単なようでかなり難しいことだと思います。

ただただ現実を当てはめるだけでなく、想像上の事柄に合わせてその都度対応できる柔軟性が必要です。

今後も近い本を紹介すると思います!

 

けど、明日こそ今までとは全然違う本の紹介になります(^_^;)

 

 

 

それではまた!

(。・_・)ノ

 

 

 

 

 

*1:『ゴジラ幻論』26p8ー11行目

*2:『ゴジラ幻論』26p12ー14行目

*3:『ゴジラ幻論』26p15ー17行目

*4:『ゴジラ幻論』289pー291pより一部抜粋